【観戦ガイド】すぐにバレー通ぶれるバレーボールの見方1 アタック編(トスの高さとテンポ)

世界バレー2018女子大会が行われています。世界バレー(バレーボール世界選手権)はバレーボール界において最も歴史のある国際大会であり、オリンピックと並ぶくらい権威のある大会です。

とりあえずいまのところ日本は上位6カ国だけが進出できる第3ラウンドの進出を決めることができました。改めて日本代表選手の技術の高さを思い知りました。以前の記事では「技術は第一流」だけど「アマチュアレベルの戦術」と否定的に書きましたが、他の対戦国もそこまで組織化されておらず、日本だけが特別遅れているわけではないのだなと思いました。

いよいよあさってから第3ラウンド。6チーム中上位4チームが準決勝に進出します。そのとき、中継を見ながら簡単にバレーボール通ぶれるポイントを紹介していきたいと思っています。今回は「アタック編その1」としてトスの高さとテンポについてお話しましょう。

理想的なトスの高さとは?高くて早いアタック

セッターのトスは状況に応じて変わっていきますが、一番いいトスの高さとはどういうトスなのでしょうか。

それはアタッカーのジャンプの頂点とトスの頂点が一致するトスです。

トスもアタッカーも上に向かってに上昇し下に落ちてくる物体は、軌道が描く放物線の頂点で上昇から落下に切り替わる瞬間に速度が低下し、一瞬停止したような感じになります。

この瞬間がトスされたボールのコントロールが最もしやすく、アタッカーの姿勢も最も安定します。

アタッカーが思いっきりジャンプした高さぴったりにトスが供給されると、相手のブロックが完成する前に、ブロックの上から十分な高さで、安定した姿勢で強くコースを狙ったスパイクを打つことができます。

これがいわゆる高くて早いアタックであり、もっとも理想的な形です。

まさに最強のアタックです。こうした高くて早いアタックのことをファースト・テンポのアタックといいます。

間違った理想形。低くて速いアタック

一方で、日本では低くて速い攻撃に対する信仰があります。低くて速い攻撃とはトスが上がってからスパイクを打つまでの絶対的な時間をとにかく早くしようとする攻撃のことです。一昔前、ロンドン五輪やリオ五輪のころに、トスを上げてからスパイクを打つまでの時間をストップウォッチで測っているエピソードがよく放送されていましたので、ご存知の方も多いと思います。

低くて速い攻撃では、アタッカーが低くジャンプしたり、ジャンプの上昇途中でスパイクを打ったりすることになります。また、トスのスピードを求めて、まだ上昇中のボールを打つことが要求されることもあります。

こうした低くて速い攻撃は、敵のブロッカーがついてこれないくらい速いトスを上げることを目的としています。

しかし、トスが低いと敵のブロックが完全な形でなくても止められてしまう可能性が高まります。海外の背の高い選手相手ならばなおさらです。

さらに、ジャンプのまだ上昇中の段階で打つアタッカーは、姿勢が安定せず、そのうえ、トスされたボールもまだ上昇中となれば、ボールと身体の位置関係がすばやく変化するため、打ちづらいので、コントロールも難しく、威力も低いスパイクとなってしまいがちです。

こうした低くて速いアタックのことをマイナス・テンポのアタック、あるいは揶揄する呼び方として低イック(低いクイックの意)と呼びます。

この節のはじめに「日本では」と書きましたが、今回の大会を見ている限り、実際には海外のチームもマイナス・テンポの幻想に陥っているようです。

遅くて高いアタックは悪くない

ここまでで、高くて早い攻撃が最も良いアタックで、低くて速い攻撃が良くないアタックだということがわかりました。
(注:「早い」と「速い」について。高くて「早い」攻撃は、トスの速度では低くて速い攻撃に負けますが、高さを生かして相手ブロックの完成より「早く」攻撃可能なので「早い」と表記しています。一方で低くて「速い」攻撃は、トスの「速度」を求めているので、低くて「速い」と表記しています。)

それでは、「高くて遅い」攻撃と「低くて速い」攻撃ではどちらが優れているのでしょうか。

優れているのは「高くて遅い」攻撃の方です。

高くて遅いアタックでは、アタッカーのジャンプよりも高く上がったトスを、落下してきた先でしっかりジャンプして打ちます。

相手のブロックが完成する可能性が高まりますが、アタッカーは高い位置から安定した姿勢で、スパイクできます。

日本代表選手は冒頭で述べたように、非常に技術的に優れています。

ブロックを避けてギリギリのコースを狙ったり、ブロックに当ててワンタッチやブロックアウトを狙うスキルの高さは世界屈指でしょう。

ですから、中途半端に低いトスをあわてて打つよりも、ゆっくりと高いトスを落ち着いて打ったほうが良いのです。

この高くて遅いアタックもテンポという言葉を用いて整理しておきましょう。

高くて遅い攻撃のうち、トスが上がる前に助走を開始しているが、アタッカーのジャンプよりも高いトスが落ちてきたところで打つアタックをセカンド・テンポのアタックといいます。そして、オープントスや二段トスのようなトスが上がったのを見てから、その位置にアタッカーが入るアタックをサード・テンポのアタックといいます。

まとめ:バレーボール通ぶるには…

もしバレーボール中継を見ていて、低いトスを窮屈そうに打っているシーンを見かけたら、解説の川合俊一や大林素子が「速ーい!」と褒めていても、「いや、いまのはマイナス・テンポになっているから、もっと高くトスを上げたほうがいいな」などと声に出すと、バレーボール通ぶれます。