明日のパウエル議長講演が一つの節目になる可能性

2019年も1ヶ月が過ぎ、市場も年末年始の総悲観的な様相からうって変わって、むしろさらなる好景気の継続を予想する向きも多くなってきました。この状況について、年始の時点で弱気予想をしていたAshidaiNet InvestmentsのIneto Ashida氏に話を聞くことができました。Ashida氏は依然として、弱気予想を続けているようです。


明日にパウエルFRB議長の講演を控え、ドル円は一時110円、日経平均は一時2万とんで900円台まで上昇した。このタイミングがドル円の売り、日本株の売りを仕込むチャンスであった可能性が高い。

私は今年1月のインタビューで2019年の投資戦略として、ドル円の売り・日本株の売り・ゴールドの買いを推奨した(2019年の投資戦略)。このうちゴールドは予想通り上昇しているが、ドル円と日本株については昨年末の暴落から大きく値を戻してきており、売りポジションは多くの人にとってマイナスになっていることだろう。

このような値動きの大きな一因となったのが1月下旬に行われたFOMCである。この会合では市場の織り込みどおり利上げはなされなかった。大きな影響があったのはパウエルFRB議長の会見での発言である。パウエル FRB 議長は会見で利上げの停止とともに量的引き締めについても停止する可能性について示唆した。

これは金融緩和バブルの継続を望む市場参加者には大いに好感され、日本株や米国株は昨年末の暴落前まで値を戻しつつある。さらに今月初めに発表された雇用統計が予想外に良かったことを受けてドル円も110円近くまで上昇している。

とはいえ、この市場の反応はあまりに楽観的すぎると思われる。昨年からFRBによる利上げや金融引き締めが意識されることによって、良い経済指標は利上げや量的引き締めを推進させるものとして市場ではあまり好感されない状況が続いていた。一方で今回は素直に良い経済指標を好感するものとなっている。

しかし、 パウエルFRB議長の基本方針はやはり金融引き締めの方針である。今回の会見ではある意味で市場に屈した形にはなったが、株価が戻り経済指標も悪くないという状況の中で金融引き締めをとりやめる理由はどこにもない。それを踏まえるならば明日2月7日に予定されているパウエル議長の講演での発言で、先月の会見以上に金融市場を喜ばせる発言を引き出すことは不可能であると考えられる。あるいはあまりに楽観すぎる市場の反応にとっては不愉快な発言もあることすら予想されるだろう。

つまり、パウエル議長の講演において株価やドル円がこれ以上上がる材料があるとは考えにくい。 一方でパウエル議長が再び金融引き締めへの意欲を示す発言をすれば、ドル円も株価も大きく下げることが予想される。

そう考えるならばここ数日の非常に楽観的な市場は、株やドル円の売りポジションを持つための絶好の仕込み期間であったという風に考えることができる。

明日のパウエル講演は無風かもしれない。その場合、利益も損もない。もしパウエル議長の発言が値動きに関係するとすれば、株価やドル円にとってマイナスの方向以外ないだろう。その場合、筆者の年初の推奨どおりのドル円の売りや日本株の売りが利益を生むことになる。そういう意味において明日のパウエル議長の発言とその後の値動きについて注視していく必要があるだろう。